本当にあった怖い話 呪死霊

オムニバス心霊ドラマのTVシリーズ『本当にあった怖い話』(テレビ朝日)で中田秀夫が演出を担当した3本「呪われた人形」「死霊の滝」「幽霊の棲む旅館」をのちにビデオ化したもの。

●「われた人形」:主人公(羽田美智子)が幼い頃に火事で亡くした姉の霊が市松人形に憑依する。
人形の特撮や声など一見チープなところもありながら、顔に影がかかって歯列矯正器具をつけた口元しかうつらない姉の幽霊はぞっとするし、最後のお焚き上げ供養のシーンなど何か不吉なことが起きているという空気が全体に満ちている。その後の中田秀夫作品同様、怪異現象だけでなく、人間の情念(ここでは劇団の配役争い)をしっかりと描いているのもポイント。

●「霊の滝」:川で子供を事故死させたことを苦にして自殺した母親の霊が、年格好の近い少年を引きずり込もうと襲いかかる、という親子愛をベースにしたお話し。
ホラー演出自体はオーソドックスで正直リアルではなく、実話系のJホラーというよりフィクショナルで、のちの『怪談』につながる系譜の作品。朽ち果てた行方不明者さがしの看板は不気味で良かった。

●「霊の棲む旅館」:古い屋敷を改装した日本旅館の一室に棲んでいる少女の幽霊が、部屋に置かれた三面鏡に残された赤いマニキュアを通して似た境遇のユカリ(水野美紀)に取り憑こうとする。鶴田法男「霊のうごめく家」と並んでJホラー模索期の重要作。
放送順からすると高橋洋とはじめて組んだ作品で、中田秀夫の監督デビュー作。デビュー作で気合いが入っていたのか、さまざまな恐怖描写が試されていて、ホームビデオを通した映像や幽霊描写などそれぞれのアイデアは今観ても十分に怖いけれど、詰め込みすぎでストーリー的には散漫に感じてしまう。

「呪われた人形」(1992年8月31日放映)
監督:中田秀夫
脚本:高橋洋
出演:羽田美智子、赤座美代子、川上麻衣子、秋山菜津子、時田成美、桑畑昭子、伊落卯木、高橋美香、中井曜子、山田純世、斎藤正吾、橘優美、村松克巳、六平直政

「死霊の滝」(1992年8月31日放映)
監督:中田秀夫
脚本:塩田明彦
出演:丘みつ子、金久美子、三上真一郎、山村美智子、滝口秀嗣、藤田大助、永田絢子、門脇三郎

「幽霊の棲む旅館」(1992年6月22日放映)
監督:中田秀夫
脚本:高橋洋
出演:白島靖代、中村由真、水野美紀、江波杏子、志村幸江、小林美和子

65分/TVシリーズ/オムニバス/1992年(ビデオ化は1999年)

本当にあった怖い話 呪死霊 [VHS]