霊のうごめく家(1991)

  • 監督:鶴田法男
  • 脚本:小中千昭
  • 「ほんとにあった怖い話 第二夜」収録

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借家に越してきた家族が体験する心霊現象を淡々とつないだ、ジャパニーズホラー黎明期の傑作短編。引っ越したばかりの感情の不安定さと心霊現象による恐怖をうまく重ね合わせている。たとえ心霊現象が起きても、そのことだけに翻弄されず、日常生活は続けられているところが実話怪談的。

ここでの幽霊は、上下黒ずくめの男性。顔を多少メイクしてはいるものの、そのまま普通の人間が演じていて動きはほとんどない。異形にならないように幽霊らしさを出そうとする方法のひとつで、その後、黒沢清監督『回路』(2000)などで洗練されていく幽霊の元祖だけれど、こちらはノンエフェクトで幽霊としての記号が少ないので、リアルではある(んだろう)けれど今見るとちょっと微妙。

ちなみに、のちの「ほんとにあった怖い話」で同じく“借家モノ”の「憑かれた家」(2003/ユースケ・サンタマリア主演)を鶴田演出で撮っていたのだけれど、オープニングのショットはこの作品を自ら引用していた。

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ほんとにあった怖い話「第二夜」 [VHS]

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獣の臭い(2005)

  • 監督・脚本:安里麻里
  • 原作:木原浩勝、中山市朗
  • 『怪談新耳袋-ふたりぼっち編-』収録

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BS-iドラマ「怪談新耳袋」の一編。いとこの夫が、子供の頃に虐待死させていた動物の霊に憑かれてしまうお話。霊とはいっても姿は見えず、その臭いを感じることしか出来ないけれど、霊能力のある主人公(「ふたりぼっち」と同一キャラクタ?)には虐待の幻影や動物の亡骸が見えてしまう。冬の陽がかげるように、部屋がゆっくりとうす暗くなって虐待の幻影が現れるシーンや、顔に照明を当てず異常なムードを醸し出すシーンなど、かつての鶴田法男や黒沢清を思わせる演出がすばらしい。清水崇以降の新世代監督ながら、旧世代の手法を継承、洗練させることのできる希有な存在だと勝手に期待しているので、ぜひ長編で心霊かサイコホラーを撮って欲しい。

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降霊(1999)

  • 監督:黒沢清
  • 脚本:大石哲也、黒沢清
  • 原作:マーク・マクシェーン「雨の午後の降霊術」

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東京ではゴールデンタイムの2時間ドラマとして地上波放映された。この頃は関西テレビ版『学校の怪談』も『女優霊』も知らなかったので、とにかく怖かった記憶がある。心霊ものに耐性のついた今、改めて見てみてみると、その幽霊表現は怖いけれど、ドラマとしてはサスペンス、ミステリに主軸がおかれていることがわかる。特に犯罪を犯してしまった後半は、ホラーとは違う不安感をかきたてられる。

霊能力のある主婦(風吹ジュン)が大学で見てしまう黒い影の幽霊からファミレスでの邪悪な赤い服の足無し幽霊、そして誤って殺してしまった緑の服を着た少女の霊まで、幽霊が見本市のように現れる。さらには後の『ドッペルゲンガー』を思わせるワンシーンも。黒沢作品では物語上生きている人間も照明の当て方で幽霊のように撮ることがあり、冒頭、風吹ジュンが壁際に佇むシーンは今回見返すまで幽霊だと思っていた。

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